令和4年度 事業計画
1. 企画委員会、役員会、総会・講演会の開催
(1)企画委員会 令和4年7月5日(火)(オンライン)
(2)役員会 令和4年7月13日(水)(オンライン)
(3)第29回総会 令和4年7月13日(水)(オンライン)
(4)講演会 令和4年7月13日(水)(オンライン)
2. 産学連携支援に関わる各種事業の展開
わが国農林水産・食品産業の成長産業化を通じて、国民が真に豊かさを実感できる社会を構築するためには、農林水産・食品分野と異分野の連携により、革新的な研究成果を生み出すとともに、それらをスピード感を持って事業化・商品化に導く必要がある。
そのため、農林水産省では平成28年度より新たな産学連携研究の仕組みである『「知」の集積と活用の場』を立ち上げ事業の展開を図っているところである。また、研究支援に関しては、平成30年度から「イノベーション創出強化研究推進事業」を立ち上げ、本格的な産学連携研究の推進と事業化・普及が試みられている。東北管内からも大学、研究機関が応募し、採択されて研究を展開している。さらに、平成30年度から新たに、「スマート農業実証プロジェクト」がスタートし、東北地域から10件が、令和2年度の応募では4件が、令和3年度の応募でも4件が採択されている。さらに、「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」でも3件が採用され、東北管内で広く農家を巻き込んでスマート農業の実証が行われている。
また、令和3年5月には、大規模自然災害・地球温暖化、生産者の減少等の生産基盤の脆弱化・地域コミュニティの衰退、新型コロナを契機とした生産・消費の変化などの政策課題に対応すべく、将来にわたって食料の安定供給を図るため「みどりの食料システム戦略」が農林水産省から公表され、持続可能な食料システムを構築するための戦略が明確にされた。
こうした状況の中で、産学連携支援事業を推進するために当研究会では、農林水産・食品分野の高度な専門的知見を有する4名の中核型コーディネーター、13名の専門型コーディネーター(令和4年度から11名)を配置し、生産者、企業、研究機関との産学連携の支援に務めている。具体的には、『「知」の集積と活用の場』と連携しつつ、研究の初期段階から民間企業を含む産学官の関係機関が密接に連携した産学連携研究を促進し、早期に事業化・商品化を実現できるようJATAFFの事業化可能性調査などを活用して、マッチング支援、競争的研究開発資金の獲得支援、研究成果の事業化・商品化支援等に重点を置き以下の事業を実施する。
1)ニーズ・シーズの収集・提供
生産者、農業法人、農業団体、市町村、普及センター、農業関連組織や民間企業へ訪問等を行い、技術的課題、研究開発ニーズ、普及支援ニーズを収集・把握する。
シーズについては、東北農業研究センター、東北地域の公立研究機関、大学、さらには民間企業からの情報獲得や訪問して収集する。作物品種・栽培法に対する新たなシーズとしては、業務用米、超多収低アミロース米、新たな機能を持った米の品種、もち性の小麦や大麦品種、機能性が高い大豆品種、東北地域での栽培適性をもったそば品種、薬用ニンジンの野菜用途に適した栽培技術、水田複合経営を支えるタマネギ、大豆、麦、子実用トウモロコシなどの革新的な栽培法が注目される。また、低コストで導入しやすいスモール・スマート農業技術も注目できる。
最近大きな注目を集めている技術としては、超低コストな子実用トウモロコシの高収量栽培技術、令和2年度のイノベ事業に採択された、無コーティング湛水直播技術、低アミロース米の多収技術と加工・商品開発に関する課題、さらには水稲の初冬直播栽培技術等が、また令和4年度のイノベ事業に採択された国産トリフの生産技術、国産飼料の生産拡大を支える牧草品種の育成と草地メンテナンス技術についてもその開発・普及を積極的に支援していく予定である。
現在、スマート農業実証プロジェクト事業の実施により、スマート農業技術に対する農業者・関連ベンチャー企業の関心は急速に高まっている。多くの農家は安価で手軽なスマート農業技術を求めていることがコーディネーターの調査で明らかになっている。こうした低コストで気軽に導入できるスマート農業技術(スモール・スマート農業技術と呼ぶ)の普及支援のために、令和3年度は3回にわたってセミナーを開催し、大きな注目を集めた。令和4年度もスモール・スマート農業技術の普及を支援していく予定である。
東北農業研究センター事業化推進室との月1回定例の意見交換会の中で、最新の技術開発シーズを探索する。また、東北各地の専門型コーディネーターとの情報交換と開発技術の普及の方法について意見交換を緊密に行う。
収集したニーズ・シーズをテーマにしたセミナー等を開催し、開発技術の事業化・社会実装に向けたマッチング等の取り組みを強化する。ニーズ・シーズの収集・提供について、年間100件以上(令和3年度170件)を、セミナーによるニーズ・シーズの収集については、新型コロナウイルスの影響もありオンライン開催も含めて7回以上は開催する。
2)産学連携等のためのマッチング
必要に応じ、JATAFFの「事業化可能性調査」制度の活用により、関係者によるセミナーを開催し、競争的研究資金の獲得や研究成果の円滑な移転促進を図る。
低アミロース米等、特徴をもった水稲品種の普及を支援していく。また、東北農研育成の業務用多収米品種「ゆみあずさ」、岩手農研が開発を目指している超多収低アミロース米や無コーティング湛水直播技術、水稲の初冬直播き、さらには子実用トウモロコシの栽培技術の普及なども支援していく予定である。また、令和4年度のイノベ事業に採択された国産トリフの生産技術、国産飼料の生産拡大を支える牧草品種の育成と草地メンテナンス技術についてもその開発・普及を積極的に支援していく予定である。
マッチングは、これまで、東北農研が育成したもち小麦品種「もち姫」については、企業へ紹介を行い商品化につなげている。令和元年度は、東北農研育成の大豆品種「里のほほえみ」を福島県相馬地域の農業法人に紹介するとともに、健康食品の製造販売企業との取引を仲介した。また、東北農研が開発した低コスト・自作可能なハウス環境遠隔監視システム(通い農業支援システム)については、スマート農業に関わるセミナーで紹介を行うとともに、興味をもった農家・農業法人への普及を支援している。現在、岩手県、青森県の農業法人、その他の農家に普及し、高い注目を受けている。「通い農業支援システム」は、農林水産省、「2021年農業10大ニュース」のトピック2に選ばれ高い評価を得ている。令和4年度も、革新的な技術シーズの発掘を進め社会実装のためのマッチング活動を積極的に展開していく。
農福連携を支援するため、青森県の福祉法人と青森県の新郷村との間で支援活動を展開したが令和3年度は、コロナウイルス蔓延の影響で支援活動は一時休止した。要請があれば再度支援活動を展開する。
また、福島県の放射能汚染地域の復興のため、さつまいもを中心とした生産・加工を支援する取り組みを令和2年度から実施し、令和3年度は広く東北地域での生産可能性のPRを行った。農家の注目度が大きいことから、令和4年度も引き続き東北地域におけるさつまいも普及を目指して支援活動を継続していく予定である。
令和3年度は、新たな試みとして地域農業の持続的発展に貢献できる技術の地域単位での普及を促進するため、岩手県の紫波町と八幡平市での取り組みを開始した。この取り組みは青森県新郷村での取り組みに続く、地域農業支援活動であり、令和4年度も活動を継続する予定である。
3)研究開発資金制度の紹介等
セミナー等を開催し、農水省の競争的研究資金に係る制度の紹介、応募書類の作成等について指導・助言を行うとともに、個別相談会を年2回以上開催する。また応募相談に応じて、研究グループ参画機関の紹介、応募書類のブラッシュアップ等の指導・助言を行う。
令和3年度はイノベ強化事業への申請支援9件(採択2件)、スマート農業実証プロジェクトへの応募支援を5件(採択2件)、その他1件の支援を行った。令和4年度も3年度を上回る応募支援と採択の実現を目指す。
4)商品化・事業化の支援
コーディネーターによる民間企業・現場等のニーズを収集し、試験研究機関等に紹介しマッチングを図るとともに、必要に応じセミナー等を開催しマッチングの機会を設ける。要請があれば、商品化・事業化を成功に導くためのビジネスモデル開発に対する支援、消費者調査なども支援していきたい。
5)セミナーの開催
今後も広く東北管内でのセミナー開催を企画していきたい。令和3年度は、新型コロナウイルスの影響で、大勢の人を集めるセミナーの開催は大きく制約されたが、オンライン開催9回、ハイブリッド開催1回、対面開催2回、計12回開催(参加者総数786名)することができた。オンラインセミナーは、興味深いテーマと講演者を集めることができれば、多くの参加者を全国から集めることができるので、令和4年度も有効に活用していきたい。
令和4年度は7回を上回る開催を目指してセミナーを企画する。内容的には、より問題を絞り込んだ新技術の開発情報、スマート農業の普及、競争的資金獲得、開発技術の社会実装に向けた産学連携セミナー、農福連携、交流・観光による地域活性化、地域農業の持続的発展を支える営農システム創造に関わるセミナーを開催したいと考えている。